2026/09/20 コラム
子の連れ去りは違法?判断基準と対処法を弁護士が解説
別居をきっかけに、配偶者が子どもを連れて出て行ってしまった、あるいはご自身が子どもを連れて別居を開始した――。いわゆる「子の連れ去り」については、「これは違法にならないのか」「どう対応すればよいのか」というご相談を数多くいただきます。本稿では、子の連れ去りの違法性の判断基準と、連れ去られてしまった場合の対処法について、裁判例を踏まえて解説します。
「子の連れ去り」とは
子の連れ去りとは、離婚を前提とした別居に際して、夫婦の一方が他方の同意を得ないまま子どもを連れて別居を開始することをいいます。相手の合意がない以上、場合によっては違法な行為と評価される可能性がありますが、常に違法となるわけではなく、その態様や経緯によって判断が分かれます。
子の連れ去りが違法と判断される場合
有形力を用いるなど粗暴な態様で子どもを奪い取るような連れ去りは、違法性が認められやすくなります。最高裁判所第二小法廷平成17年12月6日決定は、母の監護下にあった2歳の子について、別居中の共同親権者である父が有形力を用いて連れ去った事案で、行為態様が粗暴で強引であったことなどから、違法性は阻却されないと判断しました。
このように、暴力的な方法や子どもの平穏な監護状態を著しく害する態様での連れ去りは、不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償責任や、刑事上の問題(未成年者略取罪等)に発展するおそれがあります。
子の連れ去りが違法とまでは評価されない場合
他方で、別居前から主たる監護者であった親が、暴力的な態様を伴わずに子どもを連れて別居し、別居後速やかに監護者指定調停を申し立てたようなケースでは、不法行為として違法とまでは評価されない場合があります。
東京地方裁判所令和4年11月28日判決(令和3年(ワ)第34062号)は、妻が夫に無断で子どもたちを連れて別居した事案について、別居前の主たる監護者が妻であったこと、別居の判断が合理性を欠くとはいえないこと、有形力の行使がなかったこと、別居後直ちに監護者指定調停を申し立てていたことなどを理由に、夫の同意がなかったことを踏まえても別居が違法であるとはいえないと判断し、夫からの損害賠償請求を棄却しました。
つまり、子の連れ去りの違法性は、①有形力の行使の有無、②それまでの主たる監護者が誰であったか、③別居後速やかに裁判所の手続を利用したかどうか、といった事情を総合的に考慮して判断されることになります。
子を連れ去られてしまった場合の対処法
①監護者指定・子の引渡しの審判
離婚前の別居中に子の監護者を定めたり、子の引渡しを求めたりする場合は、民法第766条の規定に基づき、家庭裁判所に「子の監護に関する処分」として審判(または調停)を申し立てます。手続の詳細は、裁判所ウェブサイトの子の引渡し調停のページもご参照ください。
②審判前の保全処分
本案の審判が出るまでには時間がかかるため、緊急性がある場合には、審判前の保全処分として「仮の監護者指定」「仮の子の引渡し」を本案と同時に申し立てるのが実務上一般的です。
連れ去りへの対応が遅れると、相手方の下での監護の実績が積み重なり、いわゆる「監護の継続性」を理由に現状維持の判断がされてしまうおそれがあるため、早期の申立てが重要です。東京高等裁判所平成20年12月18日決定(平成20年(ラ)第1919号)も、違法な連れ去りが行われた場合には、未成年者の福祉に反する特段の事情がない限り、原則としてまず元の監護状態に戻したうえで、その後の本案審判で監護者としての適格性を判断するのが相当であるとの考え方を示しています。
ハーグ条約は適用されるのか
「ハーグ条約」(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)は、子どもをその常居所を有していた国から国外へ連れ出す、国境を越えた連れ去りを対象とした条約です。そのため、日本国内での移動にとどまる今回のような国内の連れ去りには適用されません。国内の連れ去り事案は、民法や家事事件手続法に基づく国内の手続によって解決することになります。
連れ去られてしまったときに取るべき初動対応
子どもを連れ去られてしまった場合、次のような初動対応が重要になります。
①できるだけ早く弁護士に相談し、審判・保全処分の申立てを行うこと
対応が遅れるほど、監護の継続性を理由に現状が維持されるリスクが高まります。
②証拠を集めておくこと
別居前にご自身が主として子どもの世話をしていたことがわかる資料(母子手帳、保育園の送迎記録など)や、相手方が無断・強引に連れ去ったことがわかる記録(LINEのやり取り、写真など)を集めておきましょう。
③保育園・学校など関係機関へ連絡すること
無断での転園・転校や引き渡しが行われないよう、通っている保育園・幼稚園・学校に事情を説明しておくことも有効です。
東大阪市・八尾市で子の連れ去りにお困りの方へ
子の連れ去りをめぐる問題は、対応の早さが結果を大きく左右します。当事務所の子の連れ去りに関するページでも基本的な対処法をご案内しておりますが、具体的にどう動くべきかはご事情によって異なります。八尾市・東大阪市で子の連れ去りにお困りの方は、お一人で悩まず、お早めに当事務所までご相談ください。
まとめ
子の連れ去りが違法と評価されるかどうかは、有形力の行使の有無や、それまでの監護状況、別居後の対応の速さなどによって判断が分かれます。連れ去られてしまった場合は、監護者指定・子の引渡しの審判と保全処分を速やかに申し立てることが重要です。お困りの際は、早めに弁護士へご相談ください。




