2026/09/29 コラム
婚姻費用の強制執行・給与差押えの方法を弁護士が解説
婚姻費用分担調停や審判で金額がすでに決まっているにもかかわらず、相手が支払いを続けてくれない——このような場合に有効なのが婚姻費用の強制執行です。本コラムでは、話し合いや調停の申立て方法ではなく、婚姻費用の強制執行・給与差押えという「決定後、実際に支払わせる段階」に絞って、履行勧告・履行命令との違いや、給与差押えで通常の債権より広い範囲を差し押さえられる特則まで解説します。
婚姻費用とは-法律上の根拠
民法752条は「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と定め、同法760条は「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と定めています。この2つの条文が、別居中であっても配偶者に婚姻費用を請求できる法的根拠です。婚姻費用分担義務は、義務者と同程度の生活を権利者に保障する「生活保持義務」とされており、自分の生活を切り詰めてでも支払うべき、通常の扶養義務より強い義務とされています。
調停・審判で決まった婚姻費用は債務名義になる
婚姻費用分担請求調停・審判の申立て方法自体については、話し合いの段階から解説した別コラムもございますので、そちらもあわせてご参照ください。調停で合意が成立した場合も、審判で金額が決定した場合も、家事事件手続法75条・268条により、確定判決と同様の効力を持つ「債務名義」となります。この債務名義があって初めて、婚姻費用の強制執行に進むことができます。
婚姻費用の強制執行に進む前の選択肢
① 履行勧告
家事事件手続法289条に基づき、家庭裁判所から相手方へ支払いを勧告してもらう制度です。費用はかかりませんが、法的な強制力はなく、婚姻費用の強制執行のような直接的な差押え効果はありません。
② 履行命令
家事事件手続法290条に基づき、家庭裁判所が相手方に期限を定めて支払いを命じる制度です。正当な理由なくこれに従わない場合、同条5項により10万円以下の過料が科されますが、それでも支払わない相手には、最終的に強制執行が必要になります。
婚姻費用の強制執行・給与差押えの方法
履行勧告・履行命令でも支払われない場合、調停調書や確定審判を債務名義として、相手方の給与や預貯金を対象に強制執行を申し立てます。婚姻費用の給与差押えには、通常の債権にはない特則があります。
民事執行法152条3項の特例により、通常の債権(手取りの4分の3が差押禁止)とは異なり、婚姻費用を請求債権とする場合は手取り給与の最大2分の1まで差し押さえることが可能です。さらに、一度でも不払いが生じれば、民事執行法151条の2により、まだ支払期が来ていない将来分の婚姻費用についても継続的に差し押さえることができます。これは、毎月不払いのたびに強制執行を申し立て直す必要がないという、婚姻費用の強制執行に特有の大きなメリットです。
婚姻費用はいつから請求できるか
最高裁判所は婚姻費用について過去に遡って金額を決定すること自体は認めていますが、現在の実務では「請求時説」が定着しており、多くの場合、調停・審判を申し立てた時点が婚姻費用の支払いの始期とされます。始期をできるだけ早めるためにも、内容証明郵便などで請求の意思を早期に明確な形で示しておくことが重要です。
東大阪市・八尾市で婚姻費用の強制執行をお考えの方へ
婚姻費用の強制執行は、申立書の作成や第三債務者(勤務先等)の特定など、専門的な手続きが必要です。決定された婚姻費用が支払われずお困りの方は、できるだけ早く弊所までご相談ください。
弊所は東大阪オフィス・八尾オフィスにて、初回のご相談を無料でお受けしております。養育費など関連するお悩みも合わせてご相談いただけます。




